数億円~の大型案件を決めるビジネスプレゼンテーション。
当然ながら、語り手も本気だし、聴き手も経営トップ層ばかりになります。
そんなビジネスプレゼンで、勝利を掴み続ける人のプレゼン術、興味はありませんか?
~目次~
■マイクロソフト 澤 円さんのプレゼンテーション
マイクロソフトきってのプレゼンター澤 円さん。マイクロソフトテクノロジーセンター センター長というお立場で、一言でいえばすごく偉い人です。
私は、以前に仕事でご一緒してから、仲よくさせていただいています。
澤さんは”浮気させ屋”の異名を持ち、競合に打ち勝つプレゼン提案により、他社製品を利用する顧客にマイクロソフトに乗り換えさせる(=浮気させる)ということをバンバンやってのける。
そんな澤さんのプレゼンの一部が、日経BPサイトに一部紹介されていました。
野村が言うのも僭越ながら、さすがお上手です。
今書いている本の切り口から、私が感じたところを感想シェアしたいと思います。
■たとえ話でイメージ化させる
最初に澤氏は、BYOD(Bring Your Own Device)という言葉の語源として、パーティーやレストランに参加者が酒類を持ち込む「BYOB」(Bring Your Own Bottle)という英語表現を紹介。
そのメリットとして、ゲスト側は好みの銘柄のお酒を楽しめること、ホスト側は酒代を負担せずに済むこと、料理や場所に集中することでコストを削減できることを挙げたデバイスの持ち込みであるBYODについても、同様の効果があるという。
BYODという、ややイメージしにくいものを、語源であるBYOBをひっぱってくることによって、メッセージに身近さ・わかりやすさを高めています。
ここで、何がわかりやすくなるかというと、効用・メリットの部分。
酒類持ち込みの話は、ゲスト・ホスト両方のメリットがとてもわかりやすい。
そのうえで「デバイスの持ち込みも、同じ効用なんですよ」としたほうが、すべてをデバイスで語るよりもスッキリ伝わります。
澤さんからプレゼンの話を伺っていていつも思うのが「たとえの天才!!」ということ。
たとえ話とは、言い換えれば概念化&具体化。
その能力がプレゼンを魅力的にすることは、間違いありません。
■提案の価値は、3段階で語る
しかし澤氏は、「BYODの目的は、”自分の好きなデバイスを使う”ことではない」と注意を喚起する。
BYODの真の目的とは、ビジネス効率を上げることで売上やマーケティング効率を増大させ、企業価値を高めることにあるという。
このフレーズ、とても重要だと私は思っています。
というのは“結局、受け手に取っての価値はどこにあるのか?その価値は大きいのかor小さいのか”を決定づける部分だからです。
“自分の好きなデバイスを使う”は、個人の好みレベル。
一方、”ビジネスの効率を上げる”は顧客の求める大きなニーズ。
そして、”企業価値を高める”は組織の究極のゴール。
見ている視点が違うのです。
■価値創造のフレームワークの3分類にあてはめると
それを、野村が価値創造のフレームワークと名付けた3層に当てはめると
1.Function(機能):好きなデバイスを使う自由度の高い設計
2.Benefit(ベネフィット):ビジネスの効率アップ
3.Future(理想の未来):企業価値の向上
と、見事にすべてを網羅。
一般的に、プレゼンの際にFunctionだけを語って終わりにするシーンをよく見かけます。
しかしそれでは、つまらないし、価値が伝わり切らない。
大型提案を成功させる人のプレゼンを分析していると、明らかな共通点があります。
それは、Futureに意識を向け、それを不足なく語ること。
今回、澤さんがなさったプレゼンはThe Microsoft Conference 2013のなかで行われた事例についてのセッション。厳密には、決断をせまる提案プレゼンではなく、もっとその前段階にあたるものです。
だから、聴衆も幅広く、各聴衆の求める未来像もバラバラ。そのなかでバラバラな未来像の公約数として「企業価値の向上」という、抽象度をあげた表現を使われています。
ここからのステップで聴衆が絞られれば絞られるほど、ここが具体化していく。そして、聴き手の言葉になっていく。
■Futureを語るには、日頃からの意識づけ
そして、選ばれるプレゼンターの共通点は、常日頃から受け手が求めるFutureに注目しているということ。
澤さんがカンファランスのなかで、そこに触れたのも、日頃からお客様のfutureにフォーカスしているので、この日も当然のようにそれが口に出たのではないかと、勝手に想像しています。