オリンピック招致の決め手、3本柱。
1.IOCの心配のタネをつぶす
2.IOCの現実的なニーズに応える
3.IOCの理念的なニーズに訴える
ここからは、2点目についての解説です。
~目次~
■2.IOCの現実的ニーズに応える
2.IOCの現実的ニーズに応えるについて。
3国すべてが、最低限の課題をクリアするのであれば、そこでは差はつきませんよね。
それでは、どこで差がつくのか? IOCが開催国に求めるニーズをいかに満たすかです。
ざっといえば、2020年オリンピック大会の成功です。
それは、選手に最高のコンディションを提供し、最大のパフォーマンスを引き出すこと。
そして、会場を訪れる世界じゅうの観客たちに満足を提供すること。
これを訴えたのが、フェンシングの太田雄貴選手であり、滝川クリステルさんです。
■選手に与えられるコンディションを語った太田雄貴選手
選手の環境を語ったのは、選手代表の太田さん。直前の映像を受けて、選手村の環境の良さを語りました。
そして、もうひとつ語ったのが、観客についてです。彼は言います。
「どの国からいらっしゃるアスリートも熱烈なサポートを楽しみにしていただけます。
知識が豊富で、アスリートの活躍とフェアプレーを尊ぶ日本のファンから」
たしかに、観客がつくる空気感によって、選手のパフォーマンスは違うことでしょう。
フェアプレーとマナーを重視し、さらに情熱あふれる観客の前でなのか、そうでないのか、その差は大きい。
ハード面(物理的な環境)ばかりを語りがちなシーンで、ソフト面(心の環境)にも言及している。
そこは、大きなプラスポイントだったのではないかと思います。
太田選手のプレゼンテーションは、まさに情熱の塊。
スポーツマンらしく、熱い思いを表現されたのは、よかったと思います。
プレゼンを見ていて、最初は視線がカメラから全くそれない所は怖くも感じたのは事実。
私が指導するならば、左右の聴衆にもアイコンタクトを向けましょうと言うでしょう。
でも、日本全体のプレゼンの一部と捉えるならば、よいアクセントになったのでは?
■世界から訪れる観客に提供する”文化”を語った滝川クリステルさん
そして、日本に滞在する時間が心地よいと語ったのは、滝川クリステルさん。
流行語大賞すらとってしまいそうな「お・も・て・な・し。おもてなし」を語りました。
お金を落としてすら返ってくる国ニッポン。
タクシーの運転手さんが世界一親切な国ニッポン。
そんな、おもてなしの国が提供する空間は、観客として訪れる方々にとって、最高の思い出になりますよと。
■もうひとつ語られた「IOCの現実的ニーズへの対応」
2020年オリンピック大会成功の根拠として語られたのは、上記の2人のスピーチでした。
そして実は、もうひとつ。
IOCが求めるものを提供できると、日本が語ったことがあるのですが、気付きましたか?
キーワードは“レガシー”です。
猪瀬知事
「私たちは、大会開催によって、都市とスポーツに新しいレガシーをもたらします」竹田理事長
「2020 年東京大会では大きなレガシーをつくりだすこと」
どういう意味でしょうか?
私が昔いたシステム開発の世界では、新システムへの対比で、既存システムをそう呼んでいました。
同じ意味なのかと調べてみると“過去の遺産”という意味のようですね。
プレゼンで語られたのは、2020年のオリンピックのために建てるスポーツ施設について。
五輪終了後も、オリンピック開催の象徴としてその建物が残るということをアピールしていました。
これって、終了後の話なので、オリンピックの成功とは関係ない話ですよね。
ここからは、私の想像です。
おそらくIOC委員会は”歴史に残る”という価値観を大事にしているのではないでしょうか。
そして、そのことを今回のプレゼンの仕掛け人は知っていた。だから、巧妙にそれを盛り込んだ。
オリンピック期間だけ建てて、すぐ潰すなんでことはしませんよと。
この考え方、よくよく考えると共感できなくもないです。
たとえば結婚式をするとします。
ホテルで披露宴をあげれば、のちのち思い出のホテルに泊まりに行くこともできます。
自分の思い出の場所には、残り続けてほしい。
今回のプレゼン、裏にはニック・バレー氏というPRコンサルタントがついています。
彼は、ロンドン・リオの招致を成功に導いた専門家。委員会の価値観を熟知しているようです。
■アプローチが多岐にわたる
こうして見てみると、3つのポイントの2番だけでも様々な切り口からアピールしています。
この多面的なアプローチが東京招致に有効に働いたと考えられます。
さて、最後は「3.IOCの理念的なニーズに訴える」にまいりましょう。