from 野村尚義

先日、セミナーコンテスト(通称 セミコン)の関東地区決勝戦での審査員をさせていただいきました。5名のプレゼンターはこれまでのコンテストの優勝者ばかりで、非常にレベルの高いセミナーばかり。

各人レベルは高いものの、やはり点数には差がついきました。やはり見ていて「ここの点がすばらしい!」とか「あぁ、おしい!この点はこういう風にした方が…」と、感心したり、やきもきしたり。

5つものセミナーを連続して見ながら、自分のなかで素晴らしいセミナーの押さえるべきポイントが明確になりました。チェックリストのような形で使えるものになったので、シェアしたいと思います。

■テーマ(何について語るか?)

・語る資格があるテーマをチョイスする
・人生の多くをかけて追及してきた領域について話す

前提として、“あなたがそのテーマについて話すのならば、聴きたい”と聴衆に思われるテーマ設定をしなければならない。このテーマ設定で失敗すると聴衆の興味は一気に半減してしまいます。意外と、ここでつまづく方は少なくありません。

■コアメッセージ(一言でいうと?)

・自分が10分間で伝えることをワンフレーズにまとめる
・そのワンフレーズが、聴衆にとって印象に残る言葉になるまで研ぎ澄ます

たとえば、セミナーのなかでノウハウを3つを語るとして、その3つがバラバラにあるのでは効果は半減。その3つのノウハウに一貫性があり、その一貫性をひとことで表すワンフレーズがあると強い。また、そのワンフレーズがノウハウをオジリナリティ高いものに変えてくれます。

■コアノウハウ(どうやればできる?)

・あなたと同じ結果を出すためのノウハウが、行動論として存在する
・そのノウハウは行動レベルの具体性か?抽象的な心構えに留まってはいないか?
・そのノウハウには新規性・オリジナリティがあるか?世で言い古されたものにはなっていないか?

セミナーには「結果を出すためのやり方」が必要。そして、それは心構えレベルでしかないのでは不十分です。ノウハウがない(もしくは、弱い・抽象的)セミナーはセミナーではなく、ただの“告白”です。

また、そのノウハウは聴いた瞬間に「あー、知ってる」と思わせるものであってはいけない。その瞬間に聴衆は興味を失ってしまいます。そのあとに響く話をしても、もう手遅れ。

こう言うと、「多くの人が結果を手にできないのは、知っていても実行していないからだ。それについて語るのは重要なことだ!」と反論してくる人もいるかもしれません。教育者としては、その意見に大賛成なのですが、講師としては反対です。聴き手のヤル気を高めるために“新規性・独自性”という名のスパイスを振ってあげることも、講師の大切なお仕事です。

■コンテンツ(具体的には…)

・あなたのノウハウが正しいという根拠を複数視点から示す
・複数視点とは、データ・自分の体験談・他者の事例・架空の具体例など

私は、こう思います「肉付けとは、イメージ化である」。コアメッセージ・コアノウハウを聴いただけでは、聴衆の頭の中に絵が浮かばないかもしれません。聴衆のあたまには「???」が浮かぶか、もしくは「ふーん」で流してしまうだけ。そこから、ビンビン絵が浮かんだというところに持ってくるために、肉付けが必要になります。

そして、その肉付けは一方向だけでは足りません。データしかなければ、それは聴いた話にすぎない。自分の体験談だけならば「私もできたのだから、あなただって!」という押し売りメッセージになってしまう。複数あることで、説得力は一気に増します。

あと、肉付けは、セミナーのコアであるノウハウに時間を割くべきです。意外と多いのが、イントロ(自己紹介)やエンディング(最後の感動部分)での肉付けに時間をかけすぎていて、中核であるノウハウに時間を割けないこと。もったいないと思った。

■感情デザイン(感情のグリップ)

・それを語りたいと思う熱い思い・熱いエピソードを示す
・その思い・エピソードを、しっかりとノウハウの強化・具体化・印象化につなげる

感動エピソードは、ないよりもあるほうがよい。しかし、なんのための感動なのかを考えなければなりません。聴衆が、泣きに来ている・笑いに来ている・感動しに来ているのであれば、それは単体でも意味があるでしょうが、学びに来ているのならば、単体ではおまけサービスにしかならない。

聴衆に「ぐっときた!」と思われる感動エピソードと、「あ~、自分の世界に浸ってる~」と思われるのとの違いは、語る必然性の有無です。前者には、その感動エピソードを語ることで、聴衆の中でノウハウ部分が強化・具体化・印象化されるように仕掛けられている。語ることで、学びが深まるから、聴衆に価値を感じてもらえます。

■パーソナリティ(デリバリー・話し方)

・基本的な話し方のチェック(声・強弱・間・ゼスチャー・表情…etc)
・話す内容と、自分のキャラクターの一貫性をとる

いわゆる話し方は、うまいほうが伝わる。それは間違いありません。それが一定レベルに達するまでは、基礎の徹底が大切だと思います。いわゆる守破離の守。それなりの時間と鍛錬を続ける中で、一般的な意味で「うまい」と言われるレベルに達します。

しかし、そこがゴールではありません。次は、守破離の破・離のステージに足を踏み入れる番です。そこから求められるのはキャラクター。自分が話す内容と話し方のキャラがミスマッチにならないようにする。そこには、話し方のベクトル付けも必要になるでしょう。逆に、話す内容をキャラクターに合わせる部分も出てくることでしょう。

このあたりは、有名人を浮かべてみると、わかりやすい。たとえば、明石家さんまさん。たとえば、笑福亭鶴瓶さん。たとえば、千原ジュニアさん。キャラが確立されている人は、10秒しゃべればもう、雰囲気からそれが伝わる。セミナー講師にもそれは必要です。

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